繁栄
疑問に思ったことは無いでしょうか?
なぜ人類は文明を起こし、かくも繁栄することができたのか?
ほかの生物ではなくなぜ人類だけが?
本書は膨大なデータから人類の「繁栄」の要因を探り出す、とても興味深い内容になっています。
いつの時代にも終末論が幅を利かせ、未来に悲観的な論者が影響力を持っていました。
ところが、実際にわたしたちの暮らしぶりは悪くなるどころか、日々見違えるほど向上しているのです。
たびたび憧れを持って語られる古い時代の「ナチュラルな」「人間らしい」暮らしというのが、いかにファンタジーでしかないか、本書を読めばわかるのではないでしょうか? そしてまたそういう憧れは、単に豊かな生活をしている人間の「贅沢」でしかないということも理解できるはずです。
飢餓や貧困、自然破壊から世界を守るには、効率を上げて都市化を進めていくことがもっとも近道だということも見えてきます。
つまり、このまま発展をつづけていくことが最善の道ということになります。
ところで、本書はさまざまなレベルで読むことができると思うのですが、
上で上げたような大局的な話だけではなく、自分のビジネスを振り返るいいきっかけにもなりました。
コンピューター業界の歴史を見ると、千載一遇の機会をみすみす見逃し、急成長を遂げる新しい競合企業に足元をすくわれた大企業の例はあまたある。グーグルですらこの宿命を避けて通ることはできまい。偉大なイノベーターは、いまだに社外の人材と相場は決まっているのだ
本書に上げられた膨大な例証を見ていくと、今日「当たり前だ」と思っていることが、明日には当たり前ではなくなっていることがわかってきます。
たとえば、自動車産業や新聞・テレビなどのマスメディアもずっと昔から主要産業のようなイメージがありますが、結局のところ、たかだかここ100年程度の歴史しかないものです。昨日まで成功していたから明日もそのまま成功しつづけられると思いがちですが、人類の歴史を見ると、実際はもっとダイナミックに産業が移り変わっていて、おそらく数十年後には、自動車産業やマスメディアのありかたは根本的に変わってしまっているかもしれません。
その意味では、「資本主義」は死にかけている。それも急速に。アメリカの平均的な企業の規模は、わずか25年のあいだに、従業員数25名から10名にまで縮んだ。市場経済は新しい労働・生産スタイルを進化させており、その中では企業の力について口にすることさえ的外れだ。未来のおもに自営の労働者たちは、自分の都合の良い場所で、異なるクライアントのために時間を区切ってオンラインで仕事をする。彼らが上司や会議や人事考課、タイムカードや労働組合の時代を振り返ったら、きっと笑ってしまうだろう。もう一度言おう。企業とは、人びとの1度的な集まりで、彼らが生産するのを助け、それによってほかの人たちが消費するのを助けるものだ。