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読んでおきたい現代の名作シリーズ

ビジネスマンは古典を読め、経営者は古典を読め、というのはよく言われることです。
しかし、そういう場面で語られている「古典を読む目的」が、「役に立つからだ」と言われてもいまひとつ説得力を感じません。
古典を読むことでリーダーシップを学ぶとか、経営者としての姿勢を学ぶとか、間違っているとは言いませんが、どうにも貧乏臭い感じがします。
嘘でもいいので、「楽しいから古典を読む」と言ってほしいものです。
楽しみのために読書をするのではなく、勉強のために本を読む、というスタンスが格好よくありません。

しかも、紹介される「古典」というのがどうも偏っているように思えてなりません。
「経営に役に立つ」古典を紹介しようとすると、同じようなものになってしまうのでしょうか。

ということで辛口な前置きで始まりましたが、「古典もいいけれど現代の名作」も読みましょうよ、いや読んでください、というのがこのシリーズの意図です。
※「読んでおきたい現代の名作シリーズ」とか書いてますが、シリーズとしてつづけるかどうかは未定です。

古典を読む目的が、教養を身につけたり人間の幅を広げるということであれば、現代の名作と言われる作品をちゃんと読んでおくことも、自分自身の成長につながるという意味で、避けて通れないのです。

今回紹介するのは「キャッチ=22」。
戦争の狂気を描いた現代文学の代表的な作品として知られています。
「20世紀を代表する小説ベスト100」みたいな企画があるとだいたい10位以内には入っているところを見ると、少なくとも英語圏では依然として評価が高いようです。 内容はとにかく不条理です。
反戦小説というよりも、不条理な状況下での人間の苦悩を不条理な笑いで表現しているというほうが近いです。
笑っているうちに後半で突然なにかがはじけます。その衝撃を演出するために前半の不条理の連続が必要なんだと読み終えると納得できると思います。
読んでない人にはこの説明では意味が分かりませんね。きっと。

ところで、この小説のタイトルは一般名詞になっていて、英米の中高年くらいの人が使うシーンを見かけることがあります。

もともと「catch」というのは「落とし穴」とか「罠」といった意味合いで、
There’s a catch somewhere 
とか
It’s a catch.
というふうに使います。

「キャッチ=22」とは小説の中に登場する軍の規則22項のことを指します。
この規則によれば、狂っていると自ら申し出てそれが認められた者は出撃任務を免除されるのですが、自ら申し出て出撃任務を免除してもらおうと考えるものは狂っていない。つまり、出撃任務を免除されることはありえないのです。

「オアは気が狂っているか」
「ああもちろんだとも」とダニーカ軍医は言った。
「あんたは彼の飛行勤務を免除できるか」
「できるとも。しかし、まず本人がおれに願い出なければならない。それも規則のうちなんだ」
(中略)
「それだけで飛行勤務を免除してもらえるのか」
「それだけだよ。あいつに免除願を出させろよ」
「そうしたら、あんたはオアの飛行勤務を免除できるんだな」とヨッサリアンは問いただした。
「ちがうね。そうしたらおれは彼の飛行勤務を免除できないんだ」
「つまり落し穴があるってわけか」
「そう、落し穴がある」とダニーカ軍医は答えた。「キャッチ=22だ。戦闘任務を免れようと欲する者はすべて真の狂人にはあらず」

ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22』上巻/飛田茂雄訳より

このように、にっちもさっちもいかない、どうにもならない不条理な状況のことを「Catch22」と表現します。
決して読みやすくはありませんが、面白くも何ともないギリシャや中国の古典を無理して読むくらいなら、こっちのほうをがんばって読んでみてください。