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眼の誕生

はじめに書いておきますが、この本はポピュラーサイエンスの傑作です。
進化」「カンブリア紀」というキーワードに反応する人なら、必読と言っていいと思います。

生命は40億年前に誕生し、それから34億年をかけてクラゲやカイメンに進化しました。
そして、5億4300万年前、突如として爆発的に進化し、500万年の間に多様な形態を持つに至ります。
これが有名な「カンブリア紀の爆発」です。

「カンブリア紀の爆発」については、さまざまな書籍が出ていて、またその原因についても諸説あります。
この本は「光スイッチ仮説」の提唱者が、光スイッチとは何なのかを語ったものです。

動物は体内の体制をもとに分類されます。これを動物門と言います。
これまでに進化した体制は38しかなく、つまりこの長い年月をかけても動物にとっての遺伝的な大変革は38回しか無かったと言えます。
そして、カンブリア紀の爆発以前に、それらすべての体制はすでに進化していました。
しかし、体内の構造は異なっていても、外部から見るとあまり大きな違いはなかったようです。
それが、カンブリア紀になって、突然、現存するすべての動物門がいっせいに体を覆う固い殻を獲得しました。
これが「カンブリア紀の爆発」と呼ばれるものです。

外部形態が突如として多様化したのは、なぜか?
それは、「眼」が進化したから
目の進化により、捕食者の効率が上がり、動物たちは外殻を変えて自らを守る必要に迫られた。

これが、著者が提唱する「光スイッチ」のあらましです。
光スイッチ説を紹介するために、著者は進化の最初の段階からカンブリア紀までの進化の流れを解説してくれます。
その事実の積み重ねが非常に読み応えがあります。

眼の進化に関して、「この複雑な目が進化の結果だとすれば、その一歩手前の『中途半端な眼』という段階があったはず。中途半端な眼では役に立たない。だから進化というのは嘘だ」という進化論への反論があります。
本書を読めばそんな反論にもならないことは言えなくなってしまうでしょう。

眼の進化に要する時間の推計で、「最初の未発達な眼から、魚類の眼までの進化にかかる時間」が約50万年、という短い時間であることは驚きでした。