コモディティ(commodity)とは
一般的にマーケティングの世界では、コモディティとは「日用品のように一般化したため品質での差別化が困難となった製品やサービスのこと」を指します。
たとえば小麦粉は、よっほど詳しい人でない限り違いはわかりません。
逆に言えばすごく詳しい人であれば小麦粉の違いがわかるのですが、その違いは多くの人にとってどうでも良い違いとも言えます。(近所にある高級パン屋は数種類の小麦粉を使い分けているようですが、そういう人にとって小麦粉はコモディティではないのでしょうね)
つまり、違いはもちろんあるにしても、購入する側にその判別が困難である場合、つまり品質における差別化ができていないときコモディティである、と言えます。
コモディティだと何が問題なのか?
品質で差別化できないということは、たくさんの企業が同品質の製品を作れてしまうということです。
購買要因には、価格、供給体制、信頼性など、いろいろあると思いますが、一番簡単な差別化の方法は価格を下げることです。結果的に価格競争が起き、価格が安止まりすることになります。マーケットリーダー以外の企業にはなかなか厳しい状況です。
とくに中小零細企業にとっては、致命的な問題ですね。安売り競争の先には破滅しか待っていません。
コモディティは一般的に価格弾力性が高いと言われています。価格弾力性とは、「価格が変動することで需要が変化する割合」のことで、これが高いということは、「価格が変わると需要が変化しやすい」。要するに同品質の商品群の中でひとつだけ安ければ、その商品の需要が高まる、ということです。
コモディティ化というのは製造業に関してよく言われることですが、小売業にとっても同様に脅威です。他の店と同じものを売っている場合は商品の品質だけでは差別化できないわけですから。
ロケーションの優位性だけで差別化していた企業は、ネット通販の台頭で居場所を失っているのではないでしょうか。
画期的な新製品を開発したり、オリジナル商品を開発すれば良いのでは?
もちろん、画期的な製品開発が簡単にできるならそれが本来あるべき姿なのかもしれません。しかし残念なことに、いまや新商品は数ヶ月でコモディティになる時代です。みながみなあなたの権利を尊重してくれれば良いですが、必ずしもそうではありません。
特許、著作権、商標などで守ろうとしてもコストがかかりますし、相手が権利を尊重しない企業である場合、コモディティ化を止めることはできない可能性もあります。
コモディティの時代にはコンテキストが重要
コンテキストとは一般的には「文脈」のことです。同じ「これはペンです」というテキストでも、推理小説の中で見るのと、SF小説の中で見るのとでは意味合いが異なります。コンテキスト(文脈)が影響するからです。
スペックの訴求は品質の訴求
スマートフォンはiPhoneとAndroidどちらが優れているのか、という話を聞いてみると、Androidを推す人はおもにスペックを話し、iPhoneを推す人は体験を話す傾向があるように思います。
Android機のCMは電池の持ちとか、カメラの画素数とかスペックの話が多いですよね?
一方、iPhoneのCMは、それを使ってどんなライフスタイルが実現できるのか、どんな体験ができるのかをイメージさせる方向性のものばかりです。
この違いはなんでしょうか?
これはどちらが正しいとかではなく、スマートフォンをコモディティと捉えているかどうかの違いではないでしょうか?
スマートフォンは品質で差別化できる商品なのか、それとも品質の違いがマニア以外の多くの人には分かりにくいコモディティであるのか、その認識の違いはマーケティングのターゲット設定や広告表現の違いに現れます。
スペック訴求で競い合ってしまうと、消費者は結果的には単にスペック表の数値の比較のみに終始してしまい、数値の偽装や商品カテゴリー自体の魅力低下を招くように思います。
コモディティの訴求にはコンテキストでのブランディングを
では、マーケティングやブランディングで生かせるコンテキストとは、どんなものが考えられるでしょうか?
もちろん、すべての企業に当てはまる正解はないので、いくつかヒントを書くだけにします。
- 製品/サービス以外の独自性を探す。
- 品質がもたらす価値以外の、顧客価値にフォーカスする。
- 理念に共感してもらう。
- 比較されない存在になる。
→ 顧客価値を考えるには「顧客視点88の質問」をぜひ体験してみてください。
→ 経営理念を企業活動に活かす方法は「理念ロケット」を参照ください。
比較されない存在になるには?
脱コモディティの究極の目標は、「応援される存在になる」ことです。よく言われるようにビジネスは「戦争」から「恋愛」になったという認識が必要です。
応援してもらえる企業になるには、企業活動を通してどんな未来を描いているのか(どんな社会になって欲しいと思っているのか)がとても重要な時代になっています。
グローバル化の時代はコモディティ化の時代でもある
購買行動はグローバルな投票行動と言い換えることもできます。
環境を大事にする企業が儲かるのであれば、ほかの企業も環境を大事にするようになります。結果的に環境を守ることが未来の社会が大事にする価値のひとつになります。
逆に、たとえば他人の権利を尊重しないビジネスをしている企業や、その企業を応援している人は、権利を尊重しない社会を作ることに加担しているとも言えるのです。
- 他人の権利を侵害していても安いものがよい(資金が豊富でなければオリジナルが守れない)
- 環境を大事にするなら多少高くても良い(そのぶんのコストをみなが負担する)
このように企業活動/購買行動は、単に生活を成り立たさせるためのものではなく、未来を創る活動でもあります。
パラレルワールドというSFで良く見る設定では、主人公が選択するたびに世界が分裂して別の世界が生まれます。私たちの絶え間ない選択は、無限の可能性を持つ未来の中から自分が住みたい世界を選択している、とも言えます。